
6月の訪問に続き、再び宮崎県西諸県郡高原町の「齊藤養蜂場」へ足を運びました。
前回お話しさせていただいた養蜂の環境づくりを少しでも形にするため、この日は私たちが準備を進めてきた試作機を現地に持ち込み、実際の巣箱へ取り付ける作業を行いました。思い描いた仕組みをようやく現場に設置できるという高鳴る気持ちと同時に、ミツバチたちや齊藤さんの日々の管理に本当に役立てるだろうかという、静かな緊張感を抱きながらの訪問となりました。
本日は、その日に経験した試行錯誤の様子と、これからの歩みについてお伝えしたいと思います。
M5Stackを用いた、小さな見守り試作機の仕組み
今回私たちが持ち込んだ試作機は、コンパクトながら様々なデータを扱えるマイコンボード「M5Stack」を主軸としたものです。
巣箱のそばに設置し、日々の状態を細やかに把握するためのセンサーとして、以下の3つの要素を計測できるように設計しました。
- 温湿度:巣箱の中や周辺の気候の変化を捉え、ミツバチたちが快適に過ごせる環境であるかを確認するため。
- 重さ:蜂蜜の蓄積具合や、群れのコンディションの大きな変化を緩やかに察知するため。
- 周波数(音声など):巣箱から聞こえる羽音の様子などを通じて、群れの状態に異変がないかをささやかに見守るため。
そして、これらのセンサーから得られた日々の小さなデータは、インターネットを通じて自動的に「Googleスプレッドシート」へと蓄積され、離れた場所からでもスマートフォンやパソコンで確認できるように仕組みを整えました。
職人である齋藤さんの長年の勘や経験を、デジタルな数値がそっと裏から支える――そんな関係性を目指した、手作りの小さなシステムです。
現地での設置と、思いがけない壁
当日は、齋藤さんにも温かく迎え入れていただき、実際の巣箱の傍らにそっと試作機を配置していきました。配線を整え、電源を入れ、無事にデータがクラウド上のスプレッドシートへと流れていくかどうかの確認作業を進めました。
温湿度のデータや周波数の計測は比較的順調に動き始めたものの、現地で大きな課題となったのが「重さセンサー」の計測でした。
巣箱という重厚な構造物を支え、その微妙な増減を正確に捉える必要があるのですが、設置した環境の条件や細かな調整の甘さからか、どうしても数値が安定せず、うまく測ることができない状態が続いてしまいました。
現場で配線を確かめ、配置を少し変えて試行錯誤を重ねてみたのですが、その日のうちに納得のいく精度を出すことは難しく、やむを得ない判断として、この日は試作機を一度すべて持ち帰らせていただくことになりました。
一度持ち帰るからこそ見えてきたこと
せっかく設置した試作機をその日のうちに持ち帰ることになり、申し訳なさや悔しさがなかったと言えば嘘になります。しかし、現場の繊細な環境に触れ、ミツバチの大切な巣箱を預かる重みを肌で実感したからこそ、「中途半端な状態で無理に据え置くべきではない」という冷静な判断ができたようにも思います。
持ち帰った試作機は、現在、なぜ重さの計測がうまくいかなかったのか、構造やプログラム、センサーの設置方法を含めて一つずつ丁寧に見直しを行っています。
自然界の環境は私たちが想像する以上に変化に富んでおり、机上の計算通りにいかないことばかりです。だからこそ、現場の状況にしっかりと寄り添い、頑丈かつシンプルに改良を重ねていく大切さを改めて教えられました。
おわりに
思い描いた通りにすべてがうまくいったわけではありませんでした。むしろ、課題の大きさと自分たちの技術の未熟さを痛感する一日となりました。
それでも、失敗や試行錯誤のプロセスそのものが、より良いものづくりへと繋がる大切な一歩であると信じています。
再び万全の準備を整えて、高原町の齊藤養蜂場へ試作機を届けられる日を目指して。焦らず、しかし着実に、コツコツと調整を重ねてまいりたいと思います。また次回の進捗についても、少しずつご報告させていただきます。



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