土が変われば、作物も変わる

今回は、「みやざき農業実践塾」の第6回研修で学んだ土壌の生物性と宮崎型改良太陽熱消毒について紹介します。

普段、農作物を栽培する際には、水や肥料、温度管理などに意識が向きがちです。しかし、作物が健全に育つためには、それらと同じくらい「土の中の環境」が重要です。土壌の中では、目に見えるミミズから顕微鏡でしか見えない細菌まで、さまざまな生物が活動しています。これらの生物は作物の生育を支える重要な存在である一方、病害や線虫被害の原因となるものもいます。

今回の研修では、土壌中の生物が果たしている役割と、それらを管理する技術の一つである宮崎型改良太陽熱消毒について学びました。

土の中にはたくさんの生物が生きている

私たちが普段目にする土は単なる栽培基盤ではありません。その中には多種多様な生物が生息し、それぞれが土壌環境の維持に関わっています。

地中動物

地中動物には、ミミズやクモ、昆虫、昆虫の幼虫、線虫などが含まれます。

ミミズは土を混ぜながら団粒構造を形成し、通気性や排水性を改善する働きを持っています。また、植物残さを細かく砕くことで分解を促進する役割もあります。

一方で、線虫の中には作物の根を加害し、生育不良や連作障害の原因となる種類も存在します。

原生動物

原生動物はアメーバなどに代表される単細胞生物です。土壌中では小さな存在ですが、生態系の一部として存在しています。

糸状菌

糸状菌はカビの仲間で、菌糸を伸ばしながら増殖します。

有機物の分解能力に優れており、枯れた植物や堆肥などを分解して土づくりに貢献しています。酸性土壌には比較的強い一方で、水田のような酸素が少ない環境では活動しにくい特徴があります。

ただし、一部の糸状菌は植物の根に感染し、病気を引き起こすことがあります。

放線菌

放線菌は糸状菌によく似た形をしていますが、より小型の微生物です。

有機物の分解能力が高く、酸素が豊富な環境で活発に活動します。土を耕した際に感じる独特の土の香りは、放線菌が関与していることでも知られています。

細菌

細菌は非常に小さな生物ですが、土壌の働きを支える重要な存在です。

有機物の分解はもちろん、窒素循環にも大きく関与しています。例えば、植物が利用しやすい形へ窒素を変化させる硝酸化成や、空気中の窒素を活用する窒素固定などを行っています。

その一方で、トマト青枯病の原因となる細菌のように、病害を引き起こす種類も存在します。

良い土づくりに必要なこと

作物栽培において理想的なのは、有益な微生物が活発に働き、有害な病原菌や害虫が少ない土壌です。

そのため、これまで多くの現場では薬剤による土壌消毒が行われてきました。しかし、臭化メチルは2012年末で使用できなくなり、現在は代替農薬や新たな技術の活用が進められています。

その中で注目されている技術が「宮崎型改良太陽熱消毒」です。

宮崎型改良太陽熱消毒とは

宮崎型改良太陽熱消毒は、従来の太陽熱消毒を改良した技術です。

最大の特徴は、施肥や耕うん、畝立てなどの作業を先に行い、その後に太陽熱消毒を実施する点にあります。

従来の方法では、消毒後に施肥や畝立てを行うため、その作業によって病害虫が再び持ち込まれる可能性がありました。

一方、宮崎型改良太陽熱消毒では、消毒後に土をほとんど動かさず定植まで進めるため、再汚染のリスクを低減できるとされています。

宮崎型改良太陽熱消毒のメリット

消毒効果の向上

消毒後に耕うんなどの作業を行わないため、病害虫の再侵入を抑えることができます。

作業の分散

ミニトマト栽培などでは、定植前の肥料散布や畝立て作業が短期間に集中します。

宮崎型では、それらの作業を比較的余裕のある梅雨時期に進められるため、秋の作業負担を軽減できます。

経費の削減

太陽の熱を利用するため農薬費を抑えることができます。また、前作で残った肥料成分を活用できることから、肥料費の節減も期待できます。

太陽熱消毒を成功させるためのポイント

太陽熱消毒は自然のエネルギーを利用する技術であるため、いくつかのポイントを押さえる必要があります。

散水を十分に行う

土壌が乾燥していると効果が十分に発揮されません。畝の中心部分までしっかり湿るように、時間をかけて散水することが重要です。

ビニールを隙間なく張る

隙間がある部分は十分な消毒効果が得られません。特にハウスの端や谷部分は丁寧な確認が必要です。

ビニールの上に物を置かない

日射が遮られると地温が上昇しにくくなり、消毒効果が低下します。

熱に弱い資材は避難させる

ハウス内は高温になるため、加温機のコントローラーや熱に弱い灌水資材などは事前に外へ移動しておく必要があります。

太陽熱消毒後の注意点

太陽熱消毒は病害虫や雑草の種子を減らす効果がありますが、有益な微生物にも影響を及ぼします。

その結果、定植直後には硝酸化成菌が減少し、肥料成分である硝酸態窒素の供給が一時的に低下することがあります。これにより作物の初期生育が鈍くなる場合があるため、完熟堆肥を少量施用したり、硝酸系肥料を補給したりする対策が有効と紹介されていました。

研修を通して感じたこと

今回の研修を受けて、作物を育てているのは肥料や水だけではなく、土壌の中で活動するさまざまな生物たちの力が大きく関わっていることを改めて学びました。

特に、病害虫を防ぐだけでなく、作業の効率化やコスト削減にもつながる宮崎型改良太陽熱消毒は、環境に配慮しながら安定生産を目指す上で非常に有効な技術だと感じました。

これから栽培を続けていく中で、作物だけを見るのではなく、「土の中で何が起きているのか」という視点を持ちながら土づくりに取り組んでいきたいと思います。

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